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2021.5.07

決めるのは自分自身―産後を健やかに生きるー【後編】

産後ドゥーラ
松本忍さん

―前回、事業所の活動についてお伺いしましたが、なぜ松本さんは、産後ドゥーラとして活動を始めたのでしょうか?
自分の経験が大きくかかわっています。私の夫は整体師であり、人の身体に対して深い知見があります。私が子どもを出産した際に「産後は養生が必要で、骨盤に負担をかけない様に過ごすことが大切」だと夫から教わり、そうする為に家事全般を夫がすべてやってくれました。一方で、世の中の家庭を見ていると、お母さん方が産後も動いてしまっていることが多い印象です。そして心身ともに疲弊してしまっていて。。。この現状をどうにか解決したいと思い、会社員として勤めていた職場を退職し、ドゥーラ協会で専門資格を取得して、この愛知県岡崎市で活動をはじめました。
―やはりご自身の経験が深くかかわっておられるのですね。そして活動を通して、その課題を解決したい需要は確かに存在した、ということ。
そうです。ただ、現代ならではの課題が今の子育て世代にあると感じます。それは、2つあ
ります。1つは「自分たちで決められない」傾向があることです。情報社会になり、情報が膨大にあふれたことで、自分で情報を選び、決断することが難しいと感じるお母さんがいます。なんでも調べることに慣れていて、それが逆に決められなくさせているように見えます。「松本さん、これどうしたらいい?」という質問をたくさん受けます。それを聞いて受け止めますが、私たちが答えを出すのではなく、一緒に考えていきます。ただ、何が起きても、子どもと向き合うのはお母さん自身です。最後は自分で決める決断力を身につけてもらえると、その先の子育てだけでなく、お母さん自身が生きやすくなるのではと思います。それがドゥーラの役目だと感じています。
―インターネットでなんでも調べる癖、私にもあります...もう1つの問題は何でしょうか?
「頼る」ことが苦手であることです。
人間関係が希薄化しつつある社会的変化も関係していると思います。たとえお母さん方の親御さんが近くに住んでいても、頼ることはせず、自分たちの力だけで何とかやってしまおう、という傾向があります。昔は家族や地域の人みんなで子どもを育て合っている時代でした。そうすることでお母さんたちの負担も減っていた。けれども「頼るといろいろ言われそうで面倒。だったら自分たちでやっちゃいたい。」という心理が働きがちです。夫婦二人の力で何とかなる、と思っていますが、心身が不安定になる産後は、夫婦二人だけですべてやり切るのは負担が大きいのです。
―自己責任論が日に日に強くなっていることも関係していそうなことですね。
自己責任という考えがあるとはいえ、1つ目の問題の通り、自分たちで決めることが難しく、不安を持ったままの状態で子育てに向き合っていて、どこまでも不安を解消できずに子育てを続けることになります。そのような状態では、赤ちゃんが今何を要求しているのか、感じることも難しくなると思うのです。赤ちゃんは周囲の状況をよく分かっています。お母さんが自分で決めて、自分で赤ちゃんに向き合い感じること。そうできる感覚を持って欲しいと強く思います。
―最後に、これからの子育ての未来についてお考えをお聞かせください!
未来は明るいと思います。私がお話してきた課題の存在を認識して、課題を解決しようと奔走する方々を、私はたくさん知っています。しかし、繰り返しになりますが、課題を解決するにあたって、支援体制の数が日本に足りません。これからの子育て世代が、必要な情報や子育て支援に囲まれ、その選択肢の中から自分で決めていける。そしてそれを認め合える。そういった未来を構築できるよう、私たちもできることを続けていきます。
関連リンク
「産後ドゥーラさん」はこちら!
【前編】はこちら