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2021.8.06

【NPO#3】支援だけでなく、町を、文化を、作っていくこと@こまちぷらす【前編】

NPO こまちぷらす
代表 森 裕美子 さん

今回は愛知県のメーカーを退職後、神奈川県で子育て支援を行う「こまちぷらす」の代表である森さんから、文化づくりという観点でお話を伺いました。前編では、メイン事業である「こまちカフェ」がどのようにして地域に溶け込んできたのかを探ります。
―今回はお時間をいただきましてありがとうございます。まずは、「こまちぷらす」さんの活動内容を教えてください。
「子育てをまちでプラスに」というビジョンの通り、子育てを街の力で豊かにしていくことを目的としています。2012年にママ友5人で発足して、現在はスタッフが50人、ボランティアが180人と大きな規模となっております。現在は、6つの事業を展開しています。
―子育てをまちの力で豊かにする、とは具体的にどういうことでしょうか?
子育てをまちでプラスにするために、誰も孤立させないこと、そして街のいろんな人の力を活かす、ということです。もちろん、子育て支援も大事ですが、支援以上に、2つの大事な「てこ」があると考えています。1つは、対話の機会と出番があること。多くの人が孤立感を感じるのは、自己肯定感の低さや頼ることができない環境があることに起因しています。誰かとの対話を通して、自分の自己肯定感を高めたり、誰かに頼れたり、そしてその先に自分でも何かできないだろうか、と思える機会を作ることです。もう1つは、自分事として子育てに関わる人を増やしていきたいということ。これらの「てこ」を動かすことを意識して、少しずつ活動をしています。
―特に現代は、個人がより孤立しがちで、他人と関係を築くことを面倒に感じる方もいますね。
他人と関係を築くことに面倒くささを感じ、頼ることをやめてしまう人がいるのは、現代だけでなく、何十年も続いていることだと思います。産前に子どもの世話をしたことがない人が多くいる中で、出産して子育てをはじめることは、ある日突然、新人教育無しに命を預かる業務に取り掛かるようなものですからね。けれど、関係を築くことを面倒だと感じる方も、心の中のどこかで助けを求めている場合もあります。その助けの声に気付いてくれる人がいたら、その人も安心しますよね。ただ、踏み出して、助けの声を上げる人は少ないものです。だからこそ、いつの間にか人を頼れている、そんな環境や機会を作ることを私たちは意識しています。
―メイン事業でもある「こまちカフェ」は、まさにその役割を担っていると思います。カフェの取り組みを具体的に教えてください。
特にみなさんに喜んでいただけるのは、見守り付きのランチです。地域のボランティアの方に平日のランチタイムに毎日入ってもらっていて、ボランティアの方がママさんに代わって見守りをしています。その間にママさんたちは温かいご飯を両手で食べられます。家庭内で小さなお子さんのお世話をしていると、座って温かいご飯を食べることはままならないんです。冷たいご飯を急いで食べることがよくあります。温かいご飯を落ち着いて食べるだけで、大げさではなく、人間性を取り戻したかのような感覚になるんです。ご飯を食べておいしい、ということ、久々に味わって食べたという体験が、私という存在を取り戻していくことができるのです。

また、カフェとして運営しながら、月に1回は「おしゃべり会」という名前でいろんなテーマの勉強会や交流会を行っています。例えば、障がいを持つお子さんを育てる方々の交流会。近しい人にも心の内を話せない一人で抱えがちなクローズドな話題も、同じ境遇を持つ方たちという話せることで勇気をもらったり、心の重りを軽くすることができます。そういう関係性を築いていくことに力を入れています。
―見守りランチも交流会も、誰かに「委ねる」ということに繋がるわけですね。このアイデアはなぜ生まれたのでしょうか?
理由は2つあります。1つはそういった、誰かに頼れる場所が地域に無かったからです。昔であれば、子育て世代の方々は、近所の住民や親せきに頼りやすい環境だったと思います。地域の人が子育てを助けることは、日常の風景でした。しかし今では、特に「こまちぷらす」がある横浜市戸塚区では、転勤族が多くて、実家や親せきが遠いところに住んでいる、という方が多いです。その環境であると、誰にも頼れずにママさんたちが疲弊して、産後鬱にもつながりやすい環境です。先ほどの例でいうと、温かいうちにご飯を食べることすらままならないからです。

2つ目は、自分の子どもを1人で頑張って育てるのではなく誰かに頼るという大切さを共有したかったから。以前は私も、子育ては一人で頑張らなければいけないものという考えでいました。しかしある会への参加時に、自分の子どもをたくさんの人に抱っこしてもらえました。他の人に「委ねる」という小さな経験をしたことで、「一人で頑張らなくていいかもしれない」という気付きを得たのです。この経験を言葉で届けていくのではなく、誰かに頼ってみる、委ねるという実践が日常の中に溶け込むことが大事であると考えています。カフェは日常に溶け込んでいる場所なので、そこに誰かに「委ねる」という仕組みをかけ合わせました。
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