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2021.10.08

【NPO#6】仕事を楽しむ、選択肢を広げる環境づくりを@ブルーバード【前編】

NPO法人ブルーバード
代表理事 西尾果小里・ 専務理事 水野愛

今回は愛知県豊田市を拠点に、働き方改革や女性活躍のための活動をされているNPO法人ブルーバードの代表理事 西尾果小里さんに話を伺いました。愛知県と働き方改革に関する取り組みを行うなど、企業や自治体と強い繋がりを持って活動されています。今回はブルーバードさんの設立背景や活動内容・想いについて伺います。
今回は【前編】です。
―本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。改めてブルーバードさんの設立背景について教えてください。
私たちは2012年2月から市民活動として「ブルーバード」を立ち上げました。私自身が企業に勤めている時に育休を取得し、働きたいという想いがある一方で「女性が働きながら育児をすることの難しさ」を痛感したことがきっかけです。
私は「しっかり働いてやりがいを感じたい」という想いが強くありましたが、「子供のお迎えがあるから夜遅くまで残れない」という理由で十分に仕事を任せてもらえませんでした。一方現場では、「こんなにも働きたくない」という人たちが夜遅くまで残業し疲弊していました。「働きたい人が働けず、働き過ぎの人が疲弊している。もっと会社全体でバランスが取れないものか?」という疑問をきっかけに、色々勉強を始めました。ちょうどその頃からスタートさせた社内改革に大きなやりがいを感じたこともあり、やり切った後に退職。今は企業のコンサルティングを中心に活動しています。
ーご自身の育休復帰後の経験が大きく関わっているということですね。育休期間中など子育てで最も大変だったことはなんでしょう?
「大人」と話すことができないことでした。育休中は、子ども2人につきっきりでしたので、ほとんど子ども以外と接する機会がなかったのです。たまに同僚と会うことができた時には普段話せない分、驚かれるほど話していました (笑) この時、自分は大人と関わりたいのだと強く感じましたね。
ー確かに大人と接するのと、子どもと接するのは全く異なってきますよね。
 そうなんですよね。私は育休後、職場復帰してからの方がむしろ気持ち的には楽になったと思いました。保育園に子どもを預けて仕事をしているときは、仕事に集中できることがとても嬉しかったです。育休中は自分のことに集中して取り組む時間が取れなかったので... また子どもに対する気持ちにも変化が生まれました。保育園に預けて少し離れている時間があることで、「子どもに会いたい」という気持ちがより生まれました。ここで愛情を再確認することができました。

ですが、これもまたハードな生活でした。自分が大好きな仕事に取り組める一方で、家事・育児をしなければならないことに変わりはありません。夫は帰りが遅く、家事・育児の負担はほぼ自分にかかってきていました。
ー育児と仕事の両立の大変さを改めて感じました...
そのような中、育休を取得して良かったと思ったときはありましたか?
ありました!育休を取得し、少し仕事から距離を取ったことによって自分の人生を見つめ直すことができたと思います。私はこの期間があったからこそ、自分自身が「仕事が好き」ということを自覚できました。またインターネットの閲覧や読書の時間を持てたので、たくさんの情報に触れることができ、自身の考え方も変化しました。そして人材としての価値が高まったように感じたのです。

 昨今男性の育休取得についての議論などなされていますが、私は男性も育休を取得した方が良いと感じます。男性も育休を取得できれば、仕事だけでなく、人生全体で自分自身を見つめる機会になります。仕事だけでは中々自分の引き出しを増やすことができません。しかし、育休が取得できれば、
仕事以外にも沢山の世界や価値観に触れることができ、人材力も増します。また、子どもが小さい時期に、どれだけ夫婦で協力し合えるかが、その後の夫婦間の愛情に大きく影響するというデータもあるんですよ。
ー育児を協力して行う環境づくりは大きな課題ですよね。
西尾さんは社内改革に携わっていらっしゃったと伺いましたが、その経験や課題感がご自身の考えに影響しているのでしょうか?
大きく影響があったと思います。当時の改革は、「在庫の棚卸しシステムと帳簿管理」が課題になっていました。私は営業事務を担当していましたが、改革を成功させるには、現場、経理、取引先、上司や役員、、、様々な人々に「それは大切だからやろう」と動いてもらわねばなりません。一体どうしたら、一人ひとりが「自分ごと」として前向きに協力してくれるだろうか?試行錯誤を重ね、働きかけました。その中で得た確信は、「誰もが、本当は意味あるいい仕事をしたいと思っている」ということでした。それを信じて人に働きかけることで、その人の「心に火が灯る」瞬間が生まれるんです。そうすると、協力が得られるばかりでなく、目の前の人がイキイキと輝き出します。私は今でも、その輝きを見たくてこの仕事をしているようなものです(笑)
仕事のやりがいは、その人の人生を豊かにするために、とても大切な要素だと感じています。
ー西尾さんの仕事に対する姿勢には私も見習わなければと思います。育休復帰後の仕事について、任せる側が配慮しすぎて、復帰者にやりがいが感じられないといった問題もありますよね。
とてもよく聞くケースですね。上司は、辞めてもらっては困るので、とにかく負担を減らそうと「責任の軽い仕事」「代わりのきく仕事」ばかり任せるようになる。すると、育休明けの社員は「自分は役に立てない存在だ」と、時に病むほどに悩み、退職を考える。非常にもったいないですね。
社員が働き続けやすい環境を作る場合、必ず「働きやすさ」と「働きがい」をセットで考える必要があります。どちらかだけでは上手くいきません。
また、トップダウンで仕組みを与えるだけでは機能しにくいため、社員一人ひとりが「こんな環境を作りたい」と立ち上がるきっかけを与えることも大切です。自ら変化を生むから、楽しくなる。良いものをつくろうというプロセスそのものが、仕事のやりがいに通じます。会社側がそのようなボトムアップの機会を設けることはとても良い取り組みだと思います

(後編に続く)
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